バーチャルだっておしゃれしたい! 「第1回デジタルアパレルデザインコンテスト」授賞式レポート
デジタルコンテンツ未来を纏う、デジタルとリアルの融合 ― 「第1回デジタルアパレルデザインコンテスト」授賞式開催!

2025年11月22日(土)、壽屋本社3階ホールにて「第1回デジタルアパレルデザインコンテスト」の授賞式が行われました。
本コンテストは、バーチャル空間でのファッション表現をテーマに、学生クリエイターの斬新なアイデアを広く募集。応募総数は48作品にのぼり、ファッション業界やデジタル分野の第一線で活躍する専門家による熱い審査を経て、受賞作品が決定しました。
受賞作品はこちら⇒【受賞作品発表!】バーチャルだっておしゃれしたい! 「第1回デジタルアパレルデザインコンテスト」
授賞式には、受賞者や関係者だけでなく、ファッションやデジタル領域に関心を持つ学生・クリエイター・企業担当者など、多様な来場者が参加。ファッションとテクノロジーの未来を語り合う場として、会場は開始前から熱気に包まれていました。
式典の様子
授賞式は、主催者代表の挨拶で幕を開けました。
「VRの世界では、現実と同じようにアバターに衣装を組み合わせてファッションを楽しむ文化が広がり、バーチャルファッションは新しい表現の場として進化しています。その可能性をさらに切り拓くためには、バーチャルとリアルを融合させる挑戦が不可欠です。今回のコンテストは、その挑戦を形にする第一歩です。」
こうした力強いメッセージに続き、コンテストの趣旨や応募傾向が紹介されました。
第1回となる本コンテストのテーマは「VR世界で映えるカクテルドレス」。バーチャルならではの自由度を活かした作品が多数集まり、審査員からも「予想以上にレベルが高い」との声が上がったとのことです。どの作品にも、より良いクリエイションを目指す強い思いが込められており、見ごたえのあるラインアップとなりました。
最優秀賞に輝いたのは、東京モード学園の石孟融(クリエイター名:Yui)さんによる『叛逆ロマンス』。
ゴシック様式とY2Kカルチャーを融合させた大胆なデザインが高評価を獲得しました。
『叛逆ロマンス』のリアルドレス化
今回の授賞式最大のハイライトは、最優秀作品『叛逆ロマンス』をバーチャルデザインから実際のドレスとして仕立て、会場に展示したことです。
黒を基調にしたゴシックなシルエットに、メタリックなアクセントが映えるドレスは、来場者に強いインパクトを与えました。「バーチャルで生まれたアイデアが、現実世界でここまで美しく表現できるとは」と、審査員やゲストから驚きと称賛の声が相次ぎました。
今回のドレス制作にあたり、メインの生地は協力企業であるサンウェル様よりご提供いただきました。
異素材同士の繊細な組み合わせを美しく調和させるため、素材選定から縫製まで綿密な検討を重ね、立体感や質感を最大限に引き出す仕上がりとなりました。こうした工夫により、バーチャルで描かれた世界観が、現実のドレスとして圧倒的な存在感を放っています。
自分がデザインしたドレスが、ここまで素晴らしく仕立てられて感動しました。それぞれのパーツや素材が見事に調和し、ゴールドの刺繍部分もデザイン通りに再現していただき、大変な作業だったと思います。本当にありがとうございます。
仕様書や縫製指示書がない中、画像だけを頼りにパターンを作るのは初めての経験でした。異なる種類や硬さの素材を慎重に検証しながら縫い上げ、スカート部分は不規則な50ものパーツで構成。首元やコルセット部分のレースは、チュールにゴールドのコードをたたきつけることで一から制作しました。こうした工夫により、オリジナルの再現性を高め、デザイナーの意図に沿えるよう細部までこだわりました。完成までに要した期間は約2か月。 細部の仕上げまで徹底的にこだわり抜いたプロジェクトでした。
有識者によるパネル対談:テーマ「デジタルアパレルへの想い・展望」
授賞式の中盤では、デジタルアパレルの未来をテーマに、パネルディスカッションが行われました。
参加したのは、株式会社壽屋、株式会社ユカアンドアルファ、CLO Virtual Fashion Inc.、株式会社アダストリア、YOYOGI MORIの5社。
議論は「最近のデジタルアパレルに関する気になるトピック」と「これからのデジタルアパレルに求められること」の2つを軸に展開され、VRファッションの現状から産業の未来まで幅広い視点が交わされました。
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最近のデジタルアパレルに関する気になるトピック
まず、注目されたのはVR空間での自己表現の広がりです。
「アバターにも自分らしいファッションを楽しみたい、自分らしさを表現するというのが主流になりつつある」という意見があり、バーチャルファッションは単なる衣装ではなく、アイデンティティを示す手段へと進化していることが強調されました。
さらに、メタバース空間では、専用衣装をアバターサイズに変換できるツールが登場し、技術革新が新しい可能性を切り拓いています。こうした進化により、ユーザーの選択肢は広がり、プラットフォームの垣根を越えてアバターファッションの楽しみ方が多様化しています。
また、推し活との融合も話題に。VTuberのリアル衣装がグッズ展開されるなど、バーチャルとリアルの境界が曖昧になりつつあります。
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これからのデジタルアパレルに求められること
一方、今後に向けて議論されたのはカルチャー形成とライト層の参入です。
「VR空間の認知を広げることは、ひとつのカルチャーそのものを作っていくことにつながります」という意見があり、VRファッションは単なるトレンドではなく、文化の核となる可能性を秘めています。
また、産業の未来については「リアル世界のファッション業界は今以上に大きくならないが、バーチャルへの垣根を超えることで、ファッションシーンそのものが変わる可能性があります」という見解が示されました。
さらに、アニメやゲームなどでファッション表現が評価される作品が増えており、今後はどの業界でもファッションに強い人材が求められるとの指摘もありました。
リアルとバーチャルが融合する時代へ
今回の対談から見えるのは、ファッションが“衣服”から“体験”へと進化し、リアルとバーチャルの融合が新しい価値を生み出すということです。
重要なのは、VRの世界で「リアリティ」をどう感じさせるか。ただ単に現実を再現するのではなく、ユーザーが求める“リアリティのエッセンス”をどう表現できるかが鍵になります。
また、「業界の垣根を超えて、簡単に、手軽にAI・デジタル・VRが生活に根差す未来が来る。いま、こうした領域への理解や認識を深めることが、あらゆる場面で重要になっていく」という意見もありました。
デジタルアパレルの世界を知ること自体が、未来への第一歩――新しいビジネスの可能性は、ここから広がっていきます。
閉幕と懇親会
授賞式の締めくくりは、受賞者・審査員・協力企業が一堂に会する懇親会。会場には、リアルドレス化された『叛逆ロマンス』が展示され、写真撮影や作品解説を通じて交流が深まりました。
「デジタルとリアルの融合をどうビジネスに活かすか」など、未来志向の議論が自然に生まれ、名刺交換やSNSでのつながりも活発に。新しいコラボレーションの芽が育つ場として、参加者にとって価値ある時間となりました。
主催者である株式会社壽屋からは、今回のコンテストを振り返り、次のようなコメントがありました。
「ファッションやアパレルとは無縁と思われる当社が主催するコンテストに、48作品もの力作が集まったことに心から感謝しています。いずれも素晴らしい作品ばかりで、審査は非常に難しいものでした。
授賞式では、CLOによるデザインシミュレーション、リアルなドレス、そしてVR世界でのドレスという3つの異なる世界で作品を体験いただき、デジタルがもたらす新しい世界観をお見せすることができました。
コンピューターを使ったモノづくりは今後ますます加速し、ファッションに限らず、さまざまな業界・分野でデジタルが活躍する未来が訪れると確信しています。」
第1回開催を終えて:関係者の声
◆株式会社ブックリスタ
この度は「第1回デジタルアパレルデザインコンテスト」にご参加いただき、誠にありがとうございます。弊社の運営するクリエイターポートフォリオサービス「ENRAI」は、様々な「出逢い」を生み出す場になりたいと願い、本コンテストを主催いたしました。
「アパレルとデジタルの融合」は、きっとこれからもより大きく成長していく分野となるでしょう。その成長の中でどんなクリエイティブが生まれていくのか。今回の全応募作品を拝見し、皆様の想像力と創造力が、自分の想像を超える未来に連れて行ってくれるのではないかと、心からワクワクしています。ご応募いただいた全クリエイターの皆様の新たな挑戦と今後のご活躍を楽しみにしています。
◆株式会社ユカアンドアルファ
この度は素晴らしいコンテストにご一緒させていただきありがとうございました。
日本国内の主にアパレル企業様向けに代理店としてCLOを販売する弊社では、3D衣装を作成した”先”を様々なかたちでご案内することが命題であり、壽屋様からコンテストの打診があった際には是非にと開催を応援することを決めさせていただきました。VR衣装の業界で、より実物に近い衣装表現やリアルクローズとされるスタイリング自体の需要が高まってきていることは、このコンテストをきっかけに知ることになった方が本当に多いと思います。アパレル業界でのVR衣装化を話題性だけではないビジネスにしていけるように、今後もコンテストを応援したいと思います。
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◆CLO Virtual Fashion Inc.
今回のコンテストは、従来の枠にとらわれない新しいファッションの可能性を学生の皆様に示す、大変意義ある取り組みだと感じております。その中でCLOのソリューションをご活用いただけたことを光栄に思います。CLO Virtual Fashionは、未来のクリエイターの挑戦を今後も継続して支援してまいります。
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◆株式会社ホビージャパン
「VR世界で映えるカクテルドレス」という難易度の高いテーマにもかかわらず、いずれの作品も完成度が高く、楽しみながら審査させていただきました。アパレルデザインのフィールドは今後、現実だけでなくメタバースへも確実に広がります。技術の進歩が速く学ぶ負担は大きいと思いますが、デザイン力は時代に左右されない強い武器です。自信を持ってスキルを磨き続けてください。本コンテストに参加いただいた皆様の更なるご活躍を心より期待しております。
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◆株式会社アダストリア
この度は、「VRで映えるカクテルドレス」というテーマに対し、自由な発想と確かな造形力が融合した素晴らしい作品の数々を審査させていただき、大変光栄に存じます。
クリエイティブで自由な発想でのパターンメイキングや、デジタル空間における新しい視点を取り入れた皆様の熱意は、未来のファッションを創造する可能性に満ちています。
弊社もデジタル分野での挑戦を進める中、皆様の作品から新たなインスピレーションを得ることができました。CLOなどの技術を駆使する皆様こそが、これから始まる新しいファッションの歴史を紡ぐ担い手です。その才能を存分に開花させ、次世代のモードを切り拓かれることを心から期待いたします。
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◆株式会社サンウェル
このたびは、「第1回デジタルアパレルデザインコンテスト」の開催、そして受賞作品の誕生、誠におめでとうございます。
(株)サンウェルはテキスタイル商社として、リアル素材に加え、デジタルでの表現にも力を入れており、今回、受賞作品に使用されたテキスタイルをリアルとデジタル両方面でご提供できたことを大変光栄に思います。
約400品番の3Dテキスタイルデータが、学生の皆さまの表現力と創造の一助となっておりましたら幸いです。
ファッションとテクノロジーが交わる未来は、まだ始まったばかりです。今後も高品質なテキスタイルと3Dデータの提供を通じ、次世代のクリエイションを支え続けてまいります。受賞者の皆さまの更なるご活躍を心より期待しております。
◆YOYOGI MORI
今回の応募作品からは、CLOや3Dへの意欲がはっきりと感じられ、構造をどう捉え、どこに工夫を加えたのかが読み取りやすい作品が多くありました。今後さらに展望を描くのであれば、デジタルならではの表現と現実的な縫製との調和において、より高いレベルを意識すると、実用性と魅力を兼ね備えた説得力のある仕上がりになると感じました。総じて、今後の成長を継続して見ていきたいと思わせる内容でした。このような機会にお招きいただき、誠にありがとうございました。
リアルとバーチャルが描く未来へ
第1回デジタルアパレルデザインコンテストは、リアルとバーチャルが融合する新しいファッションの可能性を示す場となりました。壽屋は、デジタルとクリエイションの力で、これからも新しい価値を発信していきます。次回の開催にもぜひご期待ください。