感動と驚きの仕掛け人vol.1|「創彩少女庭園」のプロデューサーに聞く(2)
インタビュー「創彩少女庭園」企画/総合プロデュース 亀山 直幸(株式会社壽屋 企画チーム)
新オリジナルプラモデルシリーズ「創彩少女庭園」の企画者で総合プロデューサーを務める亀山直幸のインタビュー、今回はその第2回。話題は新シリーズの詳細と今後の展開へ…。
このインタビューは全3回の連載です。過去の記事はこちらからどうぞ。
(1)“メカ美少女”の遊び方の変化をヒントに“普通の女の子”のプラモデルが生まれた
“誰にでも好かれる等身大の女の子”というキャラクターづくりを支える女性スタッフ
―プロデューサーとしてこだわったことは何ですか?
もちろん商品仕様全体にこだわっています。
表情パーツが多いのは喜怒哀楽を表現するのに欠かせないからですし、ヘアスタイルが複数付属するのも、単一の商品だけでも最低限のカスタマイズができるように考えているからです。
特に表情は、現在各キャラクターに9つずつ用意しているので、冬服や夏服など複数の商品に分けて封入する予定です。
どんな表情があるのかは、ブログなどでもご覧いただけるので期待してください。
新シリーズ第1弾は、スタンダードなセーラー服。どんなキャラクターにでも似合うデザインだからこそ、自信をもって提供できるというところがあります。
あとは、これまで挑戦してこなかった「座り姿」を再現するためにスカートの形状を複数付属するなど、挑戦しているポイントは多いですよ。
さらに言うと、企画のスタートの段階で「FAガール」のメカパーツを作らないで女の子素体として遊んでいるユーザーさんを参考にしたのですが、このユーザーさんたちは「組み立てに時間がかかるのは嫌なんだろうな」と(笑)。
そういった経緯で「創彩少女庭園」のキャラクターは、組み立ても他の美少女シリーズに比べて簡単になっていると思います。
説明書の通り順番を守る、きれいに切り取るという点を守れば、イメージに近いモデルが仕上がるようになっています。
もちろんヘアスタイルを変更するためのパーツなど魅力的なパーツが多い分、組み立て工程はありますが、作っている時に楽しい要素だと思います。
―「創彩少女庭園」というタイトルについては?
タイトルも、結構こだわったポイントではあります。
企画初期の「ドレスアップガールズ(仮)」というのは、着せ替え系のシリーズなんだなと何となくわかるのですが、「FAガール」をはじめとした美少女メカシリーズが「○○ガール」というのばっかりだったので、埋もれないようにしたいという気持ちがありました。
日本発信のコンテンツということもあり、タイトルを和名にしたいという気持ちがありましたが、決め手になったのはキャラクターデザインに森倉 円さんを起用できたことです。
「創彩少女庭園」というタイトルには、“創る”“ 彩る”というキーワードがあり、これが「作って塗るプラモデル」という“遊び”を表現しており、「少女」はモチーフ。「庭園」は、キャラクターだけでなく情景小物まで商品化したいという意思が込められています。文字が並んだ時に「雅びさ」を感じてもらえるようなタイトルになったと考えています。
森倉さんの描くイラストと一緒に配置することを前提に考えたタイトルなので、キャラクターデザインが別の方だったなら「創彩少女庭園」というタイトルにはなっていなかったでしょう。
他にこだわった部分としては、女性もターゲットに含まれているというところでしょうか。詳しく言うと“かわいい女の子が好きな女性”です。「FAガール」のユーザーさんの中にも女性はいました。これは過去のイベントなどでも何人もお見掛けしているので事実ですが、メイン客層は男性なのは確実です。
新規の客層を獲得するという目的の中で、男性だけでなく女性も含めるというのはビジネスのコンセプト的にも分かりやすいですよね。ビジュアル面を担当する森倉さんのファン層も、男性だけでなく女性もいらっしゃるので、そのあたりもリンクしています。
―女性もターゲットにするためにどんな工夫をしているのですか?
女性の好みを商品に反映するために、私と原型担当以外はほぼ女性でチームを構成しています。
森倉 円さんも女性ですし、弊社の女性陣と打ち合わせした時も初対面にもかかわらず意気投合しており、良いチームになると確信しました。
私は各スタッフの良いところを伸ばし、適材適所で活躍できるようにするべく各チームとの調整をしています。
その中で重要なのが、キャラクター以外のビジュアルデザイン。
リーフレットやオフィシャルサイトに使用する各種素材やテーマカラーは、社内の女性デザイナーが担当していて、いろいろな提案をもらっています。今の段階から、「パッケージのデザインも自分が担当する」と気合が入っています。
社内のスタッフが前向きに関わろうとしてくれるのは、良いコンテンツを作るには不可欠だと思います。
あとは、私の「おっさん臭さ」が出てしまわないように(笑)、キャラクターの性格などを一緒に考えてくれるスタッフがいます。
「創彩少女庭園」の“かわいいディレクション”を担当する女性スタッフなのですが、「誰にでも好かれる等身大の女の子」はどんな感じだろうかと考えてくれています。ブログも、私はシリーズのコンセプトを伝えるような商品仕様やカスタマイズについて語ることをメインにして、彼女はキャラクターの日常演出やイベントの告知関連を担当するなど役割分担をしていますね。
―これからどんなキャラクターに育てていきたいですか?
大きなことを言うと、コトブキヤのブランドアンバサダーを担うキャラクターに育ってほしいと考えています。要は、コトブキヤの商品の広告塔になる存在です。
コトブキヤには、まだ企業のイメージキャラクターがいないんですよ。
これからはコトブキヤと言えば、「創彩少女庭園」の「結城 まどか」「小鳥遊 暦」「佐伯 リツカ」の3人をイメージしてもらえるように育てていきたいと考えています。
将来的には、異業種の企業さんとコラボしていきたいですし、活動の場はプラモデルとして商品化されるだけではないと考えています。
そのため、一緒に盛り上げていこうと考えてくれている森倉さんの描く健全なイメージを損なうようなことは、私個人としても企業としても望みませんので、アンダーグラウンドな方面とは無縁でありたいと考えております。
多くのユーザーさんに見てもらえるように、幅広く展開したいというのが活動方針です。
「私たちはキャンバス、何にだってなれる。」
このキャッチコピーは、これからどんな明るい未来だって選ぶことができる、そんな彼女たちにふさわしい前向きで希望に満ちたメッセージであると同時に、プラモデルというある種の素材であることから、どんな姿にだってなれるという意味を込めて考えました。
彼女たちが皆さまと一緒に、明るい未来へ向かって歩んでいけるような“ずっと愛される女の子たち”になれますように。と、すでに商品のプロデューサーというよりも父親的な気持ちが芽生えています(笑)。
―今後のスケジュールについて教えてください。
現在は特殊な状況下のためにイベントへの出展が難しくなっておりますが、平常時は、シリーズの認知度を高めるために地道にイベント出展を繰り返していくと思います。
いわゆる“ドール”を対象とした小物系のイベントなどにも、積極的に参加してきたいと考えています。
プロモーション的な面でいうと、「ヘキサギア」の時に作ったような映像でもキャラクターの魅力をお伝えできればと考えています。
商品展開という意味ですと、具体的な発売月までは発表できませんが、第1弾である「結城 まどか【桃桜高校・冬服】」が発売された以降は、3カ月に一度くらいのペースでの展開を考えています。それと合わせて連動商品のアフタースクール(机や椅子などの情景小物)の展開を予定しています。
「創彩少女庭園」は、「FAガール」に比べて原型の制作スピードが速いので、コンスタントに関連商品が出る予定です。「FAガール」の原型制作に時間がかかるという問題は、メカと美少女部分の両方をバランスよく制作できるという類まれなるセンスが必要というところから、「FAガール」の原型が制作できるスタッフが限られていたという理由があります。
「創彩少女庭園」は可動部分があるものの、外観にメカ要素がありませんから、原型の開発リソースを他から割り当てることができるようになりました。別売りのアフタースクールで展開するウィッグやワードローブ(別売り衣装)も、全身を作ると時間がかかるという点を部分的に制作できるスタッフさえ確保できればバランスよく商品展開できるというメリットがあります。
それに髪型などは、これまでも“別売りしてもらえればカスタマイズする時に便利だ”というご意見が多く寄せられていたので、メーカー側とユーザーさん側の双方にとってメリットがあるのかなと考えています。